「最期のとき」をどのように考えればいいか
在宅療養をしている高齢者とそのご家族にとって、避けて通ることのできない難問があります。
それが、人生の最期のときをどこでどのように迎えるか、ということです。
日本人の「死」に対する感覚や「死に場所」は、時代とともに大きく変わってきています。
戦後間もない頃までは、年を取って病気をしたり身体が動かなくなったりすれば自宅で療養をして、そのまま最期を迎えるのが当然のことでした。
それが、戦後の復興とともに全国に医療機関が整備され、1976年には病院で亡くなる人が自宅で亡くなる人を上回るようになり、近年は病院で最期を迎える人が8割近くになっています。
それが、人生の最期のときをどこでどのように迎えるか、ということです。
日本人の「死」に対する感覚や「死に場所」は、時代とともに大きく変わってきています。
戦後間もない頃までは、年を取って病気をしたり身体が動かなくなったりすれば自宅で療養をして、そのまま最期を迎えるのが当然のことでした。
それが、戦後の復興とともに全国に医療機関が整備され、1976年には病院で亡くなる人が自宅で亡くなる人を上回るようになり、近年は病院で最期を迎える人が8割近くになっています。
死亡場所の推移と各国比較
しかし日本が、国民の4人に1人が65歳以上という超高齢社会に突入している昨今、そうした病院偏重の死のあり方に、疑問を呈する声が年々高まっています。
背景には、病院の「どこまでも治療する」方針の過剰な医療や、1分1秒でも長く生かすことを目指した延命治療は、高齢者の心身にとってむしろ苦痛が大きいとわかってきたこともあります。
また、日本人の死生観が変化してきて「終末期になっても、今までと変わらない生活スタイルで過ごしたい」「自分らしく人生を終えたい(その人らしく人生を終えてほしい)」と考える高齢者や家族が多くなったこともあるでしょう。
背景には、病院の「どこまでも治療する」方針の過剰な医療や、1分1秒でも長く生かすことを目指した延命治療は、高齢者の心身にとってむしろ苦痛が大きいとわかってきたこともあります。
また、日本人の死生観が変化してきて「終末期になっても、今までと変わらない生活スタイルで過ごしたい」「自分らしく人生を終えたい(その人らしく人生を終えてほしい)」と考える高齢者や家族が多くなったこともあるでしょう。
自宅で死にたい人が多いのに、実際は大半が病院死
そこであらためて注目されているのが、人生の終盤を住み慣れた自宅で過ごし、そこで最期を迎える「在宅死」「在宅看取り」です。
日本医療政策機構では、2013年に「終末期についてのアンケート」を行っています。
それによると「自分はできることなら自宅(住んでいる場所)で看取られたい」という設問に対し、「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた人は、合計60%に上ります。また「家族をできることなら住んでいる場所で看取りたい」と答えた人も、合計65%います。
実に高齢者の6割、家族の6割以上が「在宅看取り」を希望しているということです。
日本医療政策機構では、2013年に「終末期についてのアンケート」を行っています。
それによると「自分はできることなら自宅(住んでいる場所)で看取られたい」という設問に対し、「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた人は、合計60%に上ります。また「家族をできることなら住んでいる場所で看取りたい」と答えた人も、合計65%います。
実に高齢者の6割、家族の6割以上が「在宅看取り」を希望しているということです。
ところが実際には、自宅で亡くなる人の割合は全国平均で12.8%ほどです。地域による差もありますが、まだまだ病院で亡くなる人が圧倒的に多いのが現状です。
第一生命保険相互会社のシンクタンク、ライフデザイン研究所が行った2002年の調査によると、「終末期を自宅で過ごせない理由」には、次のような内容が挙げられています(複数回答可)。
第一生命保険相互会社のシンクタンク、ライフデザイン研究所が行った2002年の調査によると、「終末期を自宅で過ごせない理由」には、次のような内容が挙げられています(複数回答可)。
- 家族に迷惑や手間をかけるから(84.6%)
- 入院した方がきちんとした医療を受けられるから(41.5%)
- 容態急変時、手当がすぐできないから(37.1%)
- 自宅は介護できる住宅構造ではないから(27.5%)
- 往診してくれる医師や看護師がいないから(17.9%)
- 家族には介護の経験や知識が無いから(17.5%)
- 介護してくれる家族がいないから(14.3%)
- お金がかかるから(11.5%)
- 自宅ではゆっくり療養できないから(8.1%)
- 近所に迷惑がかかるから(1.7%)
つまり、高齢者本人や介護している家族の希望と、実際の看取り場所には、大きなずれが生じているのが現在の日本の状況です。
看取りの場所は、今後ますます不足する
ただ「家族に迷惑をかけるから、やっぱり最期は病院で」ということが、今後は難しくなる可能性もあります。
国は、年間40兆円を超える国民医療費削減のため、病院のベッド数を減らす方向に動いています。国民医療費の4割を占める入院費が縮小すれば、大きい削減効果が得られるためです。
2015年には内閣官房の専門委員会が、全国の病院・診療所の病床を現在より20万床減らす、という政府目標を掲げています。
戦後のベビーブームに生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、従来のままではベッド不足が深刻になることもあって、病院の役割を見直し、入院の対象を手厚い医療を必要とする人に限ろうとしているのです。
そして入院ベッドを減らす分、30~34万人を在宅や介護施設での治療・療養に切り替えるよう提言しています。
国は、年間40兆円を超える国民医療費削減のため、病院のベッド数を減らす方向に動いています。国民医療費の4割を占める入院費が縮小すれば、大きい削減効果が得られるためです。
2015年には内閣官房の専門委員会が、全国の病院・診療所の病床を現在より20万床減らす、という政府目標を掲げています。
戦後のベビーブームに生まれた団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、従来のままではベッド不足が深刻になることもあって、病院の役割を見直し、入院の対象を手厚い医療を必要とする人に限ろうとしているのです。
そして入院ベッドを減らす分、30~34万人を在宅や介護施設での治療・療養に切り替えるよう提言しています。
また厚生労働省の試算では、2007年時点での病院死亡者数、自宅死亡者数、介護施設死亡者数がそのまま推移したとすると、2020年には約24万人分、2040年には約49万人分もの看取り場所の不足が発生するとも報告されています。
看取り場所の推移(実績と今後の推計)
こうしてみると、高齢者に「最期まで自宅で自分らしく過ごしたい」という希望があるときは、それをかなえられるような社会になっていくことが、これまで以上に求められています。
在宅看取りについて、個人の生き方としてはもちろんですが、社会全体としても、もっと積極的に考えていくべき時代が来ていると感じます。
在宅看取りについて、個人の生き方としてはもちろんですが、社会全体としても、もっと積極的に考えていくべき時代が来ていると感じます。
最期をどこで迎えたいか、話し合っておく
幸い、介護保険制度が日本社会に浸透してきた昨今、以前に比べれば、在宅看取りは必ずしも珍しいものではなくなっています。
高齢者本人に「家にいたい」という希望があり、さらにご家族が一種の「覚悟」を決めることができれば、多くの人が最期まで自宅で過ごすことができます。
近年は、終末期の医療について話し合っている高齢者とご家族も多くなっていますが、延命治療をするか・しないかだけでなく、最期をどこで過ごしたいか、すなわち「看取りの場所」についても、本人の希望を確認しておくようにしましょう。
もちろん看取りの場所と言われても、すぐに決められない家庭も少なくないでしょう。
高齢者にもご家族にもそれぞれ様々な思いや事情があって、迷ったり葛藤したりするのが普通です。
私たち在宅医療のチームは、そうしたプロセスも含めて支援していくので、率直な気持ちを伝えてもらえればと思います。
高齢者本人に「家にいたい」という希望があり、さらにご家族が一種の「覚悟」を決めることができれば、多くの人が最期まで自宅で過ごすことができます。
近年は、終末期の医療について話し合っている高齢者とご家族も多くなっていますが、延命治療をするか・しないかだけでなく、最期をどこで過ごしたいか、すなわち「看取りの場所」についても、本人の希望を確認しておくようにしましょう。
もちろん看取りの場所と言われても、すぐに決められない家庭も少なくないでしょう。
高齢者にもご家族にもそれぞれ様々な思いや事情があって、迷ったり葛藤したりするのが普通です。
私たち在宅医療のチームは、そうしたプロセスも含めて支援していくので、率直な気持ちを伝えてもらえればと思います。
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